ペソアと歩くリスボン (ポルトガル文学叢書)

来年、リスボンに行きたいと思い、本屋で見つけて購入した。リスボンで生まれ、英国領だった南アフリカのダーバンで少年期を過ごしたペソアが、外国人旅行者のために英語で書いた本だそうだ。死後に原稿の詰まったトランクから発見され、ポルトガル語の翻訳をつけて出版された。本書の成立事情は収録の解説に詳しく書いてある。英語の原文 Lisbon: what the turist should see はネットでも公開されている。カラー写真とグーグルマップつきで役に立ちそう。日本語版は、当時のたくさんの白黒写真をつけ、ペソアの時代のリスボンを知ることができる。翻訳は、無駄のない適切な語句と文体が選択がされていて、素晴らしい。原文の英語は文語調で読みにくいところも多そうなのに。さて、内容はというと、傍にペソアを携えリスボンの街を案内してもらう。なんて贅沢な！街中に立ち、散策するときに見えてくる風景が想像できる。通りを進んで、見えてきたどこそこの建物。外から見て、中に入り、見所や歴史的背景の説明というように次から次へとテンポがよい。でもちょっと待って、たった1日でこんなに回れるわけはない。食事も休憩も取らせて貰えない。これ全部回るにはどのくらい時間がかかるのだろう。うっかりリスボンに迷い込んでそのまま住み着いてしまいそうだ。ペソアは人を騙すのが上手いらしい。読むほどに味わいが増しそうな魅力的な書だ。ペソアの他の本も読みたくなった。