少年少女人物日本の歴史 (16) (小学館版学習まんが)

「人物日本の歴史16 豊臣秀吉」を楽しく興味深く読ませて貰ひました。様々伝はってゐるエピソードを実証に基づいて取捨選択して描かれ、テンポよくコンパクトにまとめられてゐると感じました。「日吉丸」の幼名や蜂須賀小六との矢作川にかかる橋上での出会ひも実証的にはあり得ないと却下してゐるのは勇氣ある判断だと思ひます。石田三成との出会ひ、水攻め兵糧攻めの戦ひ経緯、「中国大返し」から徳川家康の臣従までの流れ等、エピソードを分かりやすく印象的に取り上げてゐるのも秀逸でありました。時代の文化を伝へようといふ工夫も光ってゐました。備中高松城で切腹した別所長治の辞世、秀吉の辞世も現代語訳を添へて載せてゐるし、今まで視覚的に知られてゐなかった永楽銭の織田信長の旗指物や秀吉の大阪城での南蛮風寝台等、細かな所まで氣を配って情報を集められて居り、新しい発見が結構ありました。まとめの解説のコメントも庶民から愛された稀代の英雄といふ視点もオーソドックスでありましたが、私には新鮮でした。本巻は、今まで知ってゐる内容を吟味、再考させてくれるよき一冊でありました。